損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2018年3月30日発行 Vol.72

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1. 実例で見る企業集団内部統制(上)
  2. 米国の継続的なヘルスケア改革に参画する健康保険者
  〜ダイナミックな改革における公的・民間健康保険者の取組状況〜
  3. 米国連邦洪水保険制度の改正にあたって
  4. 保険事業におけるブロックチェーン技術の活用
 〜発展の方向性と課題〜

 
実例で見る企業集団内部統制(上)(PDF0.9MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 取締役 隅山 正敏

   
 

T.はじめに
昨秋以降の、いわゆる「品質不正」問題を含め、子会社で発生した不祥事に関し、親会社が前面に立って対応する事例が増えている。親会社が調査委員会を立ち上げる事例も2015 年以降、急増している。

U.企業集団内部統制の位置づけ
その背景には、2014 年会社法改正をめぐる議論がある。持株会社制を採用する会社の増加に伴い、事業遂行に伴う不祥事が「社内の不祥事」から「子会社の不祥事」に変わり、それを防止する体制も「自社内の管理体制」から「子会社管理体制」に変わってきた。こうした動きを受けて、議論の焦点になったのが「企業集団ベースの内部統制システム」であり、親会社が子会社管理体制を整備して、子会社の適正な業務遂行を確保することを求められるようになってきた。

V.子会社不祥事の類型
東証一部上場企業の子会社で発生した不祥事について調査結果を公表している66 事案を見ると、発生した不祥事は、@会計不正、A役職員の個人犯罪、B品質不正、C外部リスクの取込みなどに分類することができる。
会計不正では、(A)組織ぐるみで不適切行為を行うケース、(B)個人が自身の属する組織を防衛するために不適切行為を行うケース、(C)経営陣の経営方針が引き金となって現場が不適切行為を行うケースという特徴的な事案が見られた。個人犯罪では、(ア)会社資金の着服の他に、(イ)インサイダー取引、(ウ)食品への異物混入という事案が、品質不正では、(a)公的な認定等の不正取得、(b)法令で定められた製法からの逸脱という事案が、外部リスク取込みでは、(i)買収会社が粉飾決算を行う事案、(ii)取引先の行う不正取引に巻き込まれる事案がそれぞれ認められた。

W.不祥事発生の背景
調査委員会の中には、実行者が不正に手を染めるに至った「動機」だけでなく、実行者をそこまで追い詰めてしまった環境的・構造的要因(「背景」)にまで調査・分析の範囲を広げるものがある。こうした要因を持つ子会社は、不正リスクを抱え込み易いと評価することができる。
「背景」としては、@業績不振が続いていること、A貢献度が高く親会社の期待を一身に背負っていること、B非中核(ノンコア)事業であるために親会社の関心が希薄であること、C企業買収前後の管理が不十分であること、D行き過ぎたインセンティブ体系により売上至上主義に陥っていることなどが指摘されている。

X.次号に向けて

次号では、各社の調査報告書のうち発生原因分析・再発防止策を中心に分析した上で、企業集団ベースの内部統制システムを再構築する上での論点を整理することとしたい。
   
 

米国の継続的なヘルスケア改革に参画する健康保険者
〜ダイナミックな改革における公的・民間健康保険者の取組状況〜 (PDF1.5MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
オバマケアと呼ばれるヘルスケア改革が2014 年から本格実施された。しかし、トランプ大統領と共和党主導連邦議会は、2017 年からオバマケアの廃止に取り組んでおり、その帰趨は混沌としているように見える。しかし、実際にはヘルスケア改革は継続しており、継続するヘルスケア改革のなかで公的制度運営者と民間健康保険者は、情報通信技術等を活用して課題解決のためのイノベーションに取り組んでいる。本稿は、米国の特徴を整理し改革の経緯を辿るとともに、ヘルスケアシステムのファイナンスを担う大手民間企業と公的制度運営者の動向に着目して、現在健康保険者によってどのようなイノベーショ ンの取組が行われているか、その課題は何かを明らかにする。

U.米国のヘルスケア改革とヘルスケアシステムの特徴
ヘルスケア改革には、米国のヘルスケアの特徴に根ざしたものが幾つもある。米国のヘルスケアには、所得と年齢別で仕切られたシステムと無保険者の発生メカニズムがあり、オバマケアでは無保険者の減少を目指し多くの改革が実施された。公的・民間健康保険者はヘルスケアファイナンスシステムの中心であるが、医師・病院等のヘルスケアプロバイダーと交渉し働きかけるなどヘルスケア提供システムにも深 く関係しており、両者を関係づけたヘルスケア改革も進められている。

V.健康保険市場の市場構造と当事者
米国の健康保険市場は、個人が個別に加入する個人健康保険市場のウェイトは低く、団体健康保険市場が主要な市場となっている。健康保険市場の当事者は、健康保険の取引をする保険の加入者・対象者と健康保険者だけでなく、健康保険取引を支援するサービスを提供するブローカー・コンサルタントなどの専門事業者および大手企業各社に対して福利厚生に関する解決策の交流・助言をする組織等も存在して おり、ダイナミックなヘルスケア改革に果たす役割は大きい。

W.オバマケアのインパクトと継続するヘルスケアシステム改革の実際
2014 年から本格実施されたオバマケアと呼ばれる、ヘルスケア改革は、民間健康保険者へのビジネスモデルを変更させ、様々な革新的な取組を促した。一方、トランプ大統領と共和党主導連邦議会は、ヘルスケア改革法の廃止の試みは成就せず、個人加入のExchange Market に関する部分的廃止が実現してい るのみである。

X.ヘルスケア改革に参画する公的Payor と民間健康保険者
高齢者向け公的健康保険を運営する公的保険者(Payor)は、多くのイニシアティヴとイノベーションを実施している。大手民間健康保険者も、課題解決のためのイノベーションの取組を実施している。
これらの機関は、ヘルスケア改革に追随対応するのではなく、積極的に参画している。

Y.おわりに:米国の特徴と健康保険者によるイノベーションの取組課題

米国の特徴を整理すると、強いイノベーション志向がある。健康保険者によるイノベーションの取組は進行中であり、成果はまだ先の段階である。健康保険者が、情報通信技術等を活用してイノベーションに取り組んでも、当事者であるヘルスケアプロバイダーと患者の行動が変化しない限りその成果は期待できない。その意味で、時間がかかる取組である。
   
 

米国連邦洪水保険制度の改正にあたって(PDF0.7MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 主任研究員 佐藤 大介

   
 

T.はじめに
米国における洪水リスクに対する個人向け財産保険は、連邦政府が保険者となる連邦洪水保険制度による引受が一般的である。この制度は根拠法の改正時期を迎えており、議会で新たな根拠法の成立に向けた審議がなされている。本稿ではこの制度改正にあたって、問題視されやすい財政以外の観点も踏まえた検討が必要であることを報告する。

U.制度の概要
この制度の目的は保険を提供するだけでなく、自治体に氾濫原管理を実行させ洪水リスクを軽減することがある。さらに政府の被災者支援コストを抑制するという目標もある。洪水保険の概要として、保険の入手可能性を考慮して政策的に軽減料率を適用する契約があること、保険募集と保険金支払業務は民間保険会社に委託される方式が主流であること、制度の中に洪水リスク軽減策を盛り込んでいること、などを紹介する。

V.制度改正にあたって考慮すべき6 つの視点
制度の改正にあたって、米国会計検査院は以下の6 つの視点を考慮した包括的な改革の検討を議会に推奨している。@膨大な債務、A保険料率、B入手可能性、C低い加入率、D民間保険会社の参入に対する障害、Eレジリエンス(回復力)への取り組み。これらの視点はトレードオフの関係にあるものや、相互に関連するものであり、包括的な検討が求められている。

W.被災者支援コストの抑制と損害軽減に向けた投資促進
この制度は洪水後の被災者支援とも関連している。政府には洪水後の被災者支援よりも損害に対する自助努力である洪水保険への加入を促進させる意図があると考えられる。また、この制度には保険料の割引によって自治体に氾濫原管理を強化させ、洪水損害軽減の投資を促進させるインセンティブを与える仕組みがある。

X.おわりに

この制度は、巨額の財政赤字が問題視されがちであるが、制度改正にあたっては、財政面だけでなく、加入促進による洪水後の政府の被災者支援コストの抑制や洪水損害の軽減に向けた投資促進という観点も含め十分な考慮が必要である。
   
 

保険事業におけるブロックチェーン技術の活用
〜発展の方向性と課題〜 (PDF1.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 内田 真穂

   
 

T.はじめに
ブロックチェーンは保険事業を変革しうる有力な先進技術の一つとして、保険会社の間で広く認識されている。

U.ブロックチェーンの仕組みと特徴
ブロックチェーンは従来のシステムと比べてデータの改ざんが難しく、システム障害に強いという優位性がある。スマートコントラクトを実装できるのも特徴である。様々なプラットフォームが活用目的に合わせて使い分けられている。

V.保険会社によるブロックチェーン活用の取り組み
国内外の保険会社で実用化に向けた検討が進んでいる。例えば、国際的コンソーシアムB3i、AIG のマルチナショナル保険、多数の関係者が参加する海上保険プラットフォームの構築の取り組みなどがある。航空機が遅延した場合に保険金を自動的に支払うフライト保険の開発も盛んである。第三者が管理する履歴情報を損害査定やオンデマンド保険に活用する事例も登場している。

W.保険分野における活用に向けた着眼点
現在までのブロックチェーン適用(試行)事例は、次の三つの切り口で整理することができる。
1.参加者の範囲:@保険会社内 A保険会社間 B保険会社・ベンダー間(エコシステム)
2.活用する利点:@分散型台帳 A分散型台帳+スマートコントラクト
3.革新性:@non-disrupt Adisrupt
将来的には、P2P 保険、パラメトリック保険、マイクロインシュランスに発展の余地がある。

X.ブロックチェーン活用の課題
ブロックチェーンは未成熟な技術だけに、機密性の確保、大量取引や処理遅延への対応、外部データソースの信憑性の問題、スマートコントラクト自体の不備など、様々な課題が指摘されている。エコシステム型等におけるデータ漏洩時の責任の所在やjurisdictionの問題が新たに生じる可能性もある。

Y.総括

保険事業での実用化には多くの時間と投資が必要と言われる。今後の技術の進展に期待するとともに、実現可能性の高い領域から積極的に技術の導入が進められていくことを期待したい。
   
 

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