損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2017年9月29日発行 Vol.71

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文:

1. カナダの民間健康保険システム
〜無料の公的健康保険を補足する民間健康保険のニーズとビジネスモデル〜

 

2. 持株会社の実態と利用の要点
〜一般持株会社と金融持株会社〜

  3. 欧米保険グループにおけるオムニチャネルの取り組み
 

4. 米国の企業における従業員への介護支援
〜取り組みの背景と支援プログラム〜

  5. 米国損害保険市場の動向(2016年実績)

 
カナダの民間健康保険システム
〜無料の公的健康保険を補足する民間健康保険のニーズとビジネスモデル〜(PDF1.4MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
カナダでは、自己負担がない、無料の公的健康保険(メディケアと呼ばれる)があり、各州が公的健康保険制度を運営している。民間健康保険は、コアとなる公的健康保険制度からの給付を補足する役割を主に担い、また特徴ある民間保険のビジネスモデルが展開されている。カナダの民間健康保険の加入ニーズはなにか、特徴ある事業環境でのカナダの民間健康保険者の特徴あるビジネスモデルを概観して、カナダの民間健康保険システムの特徴を明らかにする。

U.無料の公的健康保険システムの仕組みと様々な意見
メディケアは、1984 年立法のカナダ保健法を基礎とし、カナダ保健法は今日までカナダのヘルスケアシステムの基本構造を形作っている。公式見解では、その基本理念は、医学的に必要とされるヘルスケアサービスは、支払能力ではなく必要性に応じて提供されるという公正公平の価値観に基づくという。
しかし、現在必要な医療サービスを受けるために国民は長い待機期間を受忍している問題がある。メディケアのあり方に関連して、メディケアと同じ医療サービスを提供する私的クリニックと民間健康保険を拡充すべきとの意見も一部存在している。

V.カナダにおける民間健康保険システムの役割と市場構造
カナダの民間健康保険は、団体加入方式が主流である。団体は、職域だけでなく労働組合(union)も専門職団体・各種団体(association)も含まれる。民間健康保険の主流は補足的保険であり、州政府・準州政府の健康保険制度の対象外のニーズを対象にしている保険である。このほかに、早く診断診療・手術をしてほしいニーズと特別の医療サービスが欲しいニーズに対応して私的クリニックが提供する医療サービスを対象にする民間健康保険も少数存在するが、限定的である。

W.民間健康保険者のユニークなビジネスモデル
カナダの民間健康保険者は、保険会社だけでなく、他にユニークな保険者も存在している。信用協同組合から出発した事業グループが民間健康保険事業を行っており、また薬局から出発し前払式健康保険を扱う健康保険グループがカナダ全土で事業展開をしている。

X.カナダの民間健康保険システムの特徴と特徴ある民間健康保険ビジネスモデル
カナダでは、民間健康保険は、公的健康保険システムの給付を補足する役割に限定され、補償内容は極めて限定的である。私的な医療サービス提供が極めて限定的にしか存在しないので、直ぐに診断治療する医療サービスなどの需要に極く限定的にしか応えることができない。その背景には、メディケアの枠外でメディケアと同じ医療サービスを私的な医療機関が提供し一部の患者だけが私的に支払をして医療サービスに優先的にアクセスできることを容認するという二重医療制度に対する恐怖・反対とヘルスケアの民営化に対する抵抗感が、国民に広く存在しているという事情がある。

   
 

持株会社の実態と利用の要点
〜一般持株会社と金融持株会社〜(PDF1MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 取締役 隅山 正敏

   
 

T.はじめに
持株会社は、その解禁から20 年が経過したが、今日に至るまで年平均17 社超の設立(移行)がコンスタントに続いており、企業集団の運営ツールとして根付いている。解禁当初にどのような利用が想定され、実際の利用はどうなのかを調査した。同時期に解禁された金融持株会社についても、同様の調査を行ったほか、経営統合後の「新たな利用」を調査した。

U.持株会社制度の沿革
解禁当初、持株会社は、@事業執行の分離により経営への専念や客観的な判断が可能になる(事業分離)、A分社化やM&A 推進により生じる遠心力に対し企業集団の一体性を保つ重石になる(求心力)、B緩やかな経営統合を実現できる(経営統合)という利用がなされると想定されていた。

V.持株会社の利用実態
実際の利用実態を4 類型に分けて見ると、「単独移行型」が事業分離を重視し、「分社併用型」が求心力を重視し、経営統合に利用する「経営統合型」や「内部再編型」とともに、当初想定どおりの利用がなされている。実際に各社が掲げる利用目的も、(A)事業分離により戦略機能を強化する、(B)管理機能を集約してグループガバナンスを強化する、(C)持株会社主導で事業ポートフォリオを最適化するなどである。

W.金融持株会社制度の沿革
金融持株会社については、一般の持株会社と異なり、当初は業務の多角化(銀行と証券の相互参入)の手段として議論された。しかし、実際の多角化は事業持株会社方式(業態別子会社方式)で進められ、金融持株会社は、主として金融機関同士の経営統合の手段として用いられた。

X.金融持株会社の利用実態
こうしてスタートした金融持株会社だが、その後、証券事業の戦略的な重要性が高まり、金融持株会社の下に銀行子会社と証券子会社を並立して一体的に運営するという当初の利用想定に近づいている。また、経営統合型でスタートした金融持株会社が、当初目的である経営統合を実現した後も「事業ポートフォリオの最適化」や「グループガバナンスの強化」という新たな使命を担って存続している。

Y.持株会社の利用の要点
新たに持株会社体制を利用する場合であっても、既に利用している持株会社体制を活性化する場合であっても、解禁当初に想定された「事業分離」や「求心力」から派生する効用を明確にし、新たな体制を有効に活用していくことが重要である。

   
 

欧米保険グループにおけるオムニチャネルの取り組み (PDF3.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 松野 篤

   
 

T.はじめに
近年、欧米保険グループにおいてオムニチャネルを標榜した取り組みが見られている。本稿は先行例である米国小売業者におけるオムニチャネルと欧米保険グループのオムニチャネルを対比することで欧米保険グループにおけるオムニチャネルを明らかにすることを目的としている。

U.米国小売業者における取り組み
米国小売業におけるオムニチャネル登場の契機は、オンライン小売業者の売り上げ侵食に対する、実店舗を主体とする小売業者(特に百貨店)の対抗手段であった。
本稿で取り上げた米国小売業者の取り組みではチャネル間のシームレスな顧客の移動が行われており、「消費者が複数のチャネルを縦横どのように経由してもスムーズに情報を入手でき購買へと至ることができる」というオムニチャネルの概念・仕組みが実践されている。

V.欧米保険グループにおける取り組み
欧米保険グループにおけるオムニチャネル登場の契機は、今後デジタル化により顧客とのやり取りとチャネルの利用に変化が生じるとの予想に基づいている。オムニチャネルはデジタル戦略の一環と位置付けられ、その主な目的はカスタマー・エクスペリエンスの向上である。
本稿で取り上げた欧米保険グループの取り組みでは、ウェブサイトやモバイルアプリから代理店への移動は行われているが、代理店からウェブサイトやアプリへ移動は行われていない。この点は小売業のオムニチャネルの概念・仕組みに合致していない。

W.総括
欧米の保険グループの取り組みでは、募集の中核が代理店であるため、ウェブサイトやアプリによって契約者の情報に契約者、保険会社、代理店がいつでもアクセスでき、契約者がウェブサイトやアプリを用いて代理店や保険会社といつでもアクセスできることに焦点があてられ、オムニチャネルというより、オムニアクセスの取り組みという方が合致しているように思われる。今後、デジタル化により、保険募集の方法が変化することが予想されるが、オムニアクセスに留まる限りにおいて代理店中心販売という大枠は変わらないと思われる。

   
 

米国の企業における従業員への介護支援
〜取り組みの背景と支援プログラム〜 (PDF817K)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 高守 徹

   
 

T.はじめに
米国では、高齢者介護について、家族などによるインフォーマル介護が大きな役割を担っているとされ、働きながら家族等を介護する人も多く、従業員の介護を支援するプログラムを導入する企業が増加しつつある。本稿は、米国の企業が従業員の介護に関する課題を支援する背景および具体的な支援プログラムを紹介することを目的とする。

U.米国における高齢者介護の状況
米国では、介護を必要とする高齢者の多くが在宅で介護を受けている状況にある。公的な医療保障制度が介護の費用を保障しており、メディケイドは、低所得者を対象に介護サービスの給付を行い、高齢者を対象とする医療保険制度のメディケアは、医療に関連した介護サービスに限って給付の対象としている。メディケア・メディケイド等の公的な支出と自己負担等の民間の支出とをあわせた介護サービス費用の支出総額が3,388 億ドルであるのに対し、家族等による無償の介護の経済価値は約4,700 億ドルにのぼると推計されている。

V.企業による従業員の介護支援
家族等の無償の介護者は、4,000 万人と推計されている。調査によると、介護者のうち60%は働いており、そのうち半数以上はフルタイム労働者である。労働者のうち約6人に1人が介護を行っている状況にある。介護の事情により、遅刻や早退、退職等、仕事の調整または変更等の何らかの対応をとったことがある、あるいは業績や勤怠状況について注意を受けるなど状況の変化があったとする者は、働く介護者のうち61%を占めている。このような家族等を介護する従業員に対して企業は支援を行っている。介護をしながら働く従業員を企業が支援する主なインセンティブとして、「生産性の向上」、「アブセンティーイズム(欠勤)の減少」、「医療費の抑制」、「人材の募集・定着」などが挙げられている。情報リソースの提供、介護のための有給休暇およびフレックスタイム等の柔軟な働き方、緊急バックアップケアや介護者支援の社内ネットワークなど様々な支援プログラムが従業員に提供されている。

W.おわりに
現在、日本では、いわゆる介護離職が社会問題として採りあげられ、仕事と介護の両立支援の取組みが企業に推奨されている。米国企業の取組みは、日本企業にとっても参考にし得るものと考えられる。

   

米国損害保険市場の動向(2016年実績)(PDF867K)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 新添 麻衣

   
 

T.はじめに
当研究所では、「米国損害保険市場の最新動向」を継続的に発表してきた。本稿では、2016 年の米国損害保険市場の概況をまとめており、第U章では米国損害保険市場の動向を種々の財務指標に基づいて示し、第V章では個人保険分野と企業保険分野それぞれを概観する。

U.米国損害保険市場概況
2016 年の米国損害保険市場は、損害率の悪化により4年ぶりに保険引受損益がマイナスとなる厳しい1年となった。正味収入保険料は2015 年から2.6%増加して5,340 億ドルとなった。多くの保険会社が保険料の引上げを継続しているが、厳しい競争環境と米国の控えめな経済成長などを反映して、その引上げ率は年々縮小している。保険引受損益は24 億ドルの損失となった。ハリケーンなどの自然災害によるロスと主力の自動車保険のロスの悪化が業績を押し下げた。また、厳しい運用環境を反映して、正味資産運用利益は前年を2.7%下回った。この結果、税引前営業利益は前年を26.1%下回り、純利益も前年を24.0%下回った。コンバインド・レシオは、前年の98.0 から100.8 に悪化した。

V.主要種目の成績概況
2016 年の米国損害保険市場の正味収入保険料は、個人保険分野で2,987 億ドル、企業保険分野で2,270億ドルとなっている。SNL Financial のデータによると、企業保険分野のウェイトは2013 年から減少傾向にあり、個人保険分野のウェイトは2015 年の54.4%から2016 年は55.9%と増加している。種目別割合を見ると、個人自動車保険が2015 年の38.1%から40.1%に増加しており、その他種目は前年から横ばいか微減している。

 

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