損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2017年3月31日発行 Vol.70

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1. オーストラリアの民間健康保険システム
―高齢でも有病でも加入できる民間健康保険の運営方法―
  2. 金融庁のコーポレートガバナンスに関する取組み
  3.Insurance Linked Securities(ILS)がもたらす変化
―資本市場による保険リスクの引受け―
  4. 米国医賠危機への対策にみる保険会社の医療事故への関わり方の変化
  5. イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向とフランスの民間介護保険

 
オーストラリアの民間健康保険システム
―高齢でも有病でも加入できる民間健康保険の運営方法― (PDF1.2MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
オーストラリアでは、民間健康保険商品は健康度に拘わらず、地域毎に一律である保険料率で加入でき、民間健康保険者は加入申込を謝絶できない。この特異な民間健康保険システムがどのように運営されているか、その民間健康保険システムにはどのような特徴があるかについて取り上げる。

U.オーストラリアのヘルスケアシステムと政治体制
オーストラリアの健康水準は世界的に高い水準にある。同国のヘルスケアシステムであるメディケアと薬剤給付制度は、ヘルスケアサービスに関するユニバーサルアクセスを実現して高い健康水準の実現に寄与している。しかし、オーストラリアの政治体制は連邦制で度重なる政権交代もあったため、ヘルスケアシステムは複雑な構造になり、蜘蛛の巣状態になっているとの問題も抱えている。

V.民間健康保険システム改革の経緯とオーストラリアのヘルスケアファイナンス構造
オーストラリアでは、2007 年に民間健康保険システム改革を実施し、病院サービスに関する民間健康保険の改善や民間健康保険促進のための助成策改善などに継続的に取り組んできた。これらの改革によって民間健康保険と政府部門のファイナンスはクロスする仕組みとなっている。

W.民間健康保険事業・市場・システムの実態
オーストラリアでは、国民の半数近くが、多種多様な民間健康保険に加入している状況にある。民間健康保険に加入していると、治療してもらう医師を選べる、入院する病院を選べる、そして自分にあったタイミングで入院できるという選択肢がある。民間健康市場は、競争的で寡占構造になっており、団体加入ではなく個人加入ベースの市場である。

X.高齢でも有病でも加入できる民間健康保険を実現する方策
高齢でも有病でも加入できる民間健康保険を実現する方策の中心はcommunity rating システムで、Risk Equalisation がcommunity rating を支えている。また、community rating は複雑で相互に依存関係がある規制システムの一部で、保険料率規制とcommunity rating は相互に関連付けられている。

Y.オーストラリアの民間健康保険システムの特徴とヘルスケアシステム改革
オーストラリアの民間健康保険システムの特徴には四つの特徴がある。第一に、それぞれの保険商品は健康度に拘わらず、地域毎に一律である保険料率で加入でき、民間健康保険者は加入申込を謝絶できない仕組みが実際に機能している。第二に、ヘルスケアサービスへのユニバーサルアクセスの保障と利用者・加入者の選択とのバランスを取ることに成功している。第三は、個人加入ベースの健康保険システムである。第四に、熱心なイノベーションの取組がなされている。現在も、民間健康保険システムを含むヘルスケア改革が続けられている。

   
 

金融庁のコーポレートガバナンスに関する取組み(PDF810KB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 取締役 隅山 正敏

   
 

T.金融・資本市場競争力強化プラン
コーポレートガバナンスの強化に向けた政府の取組みにおいて金融庁が存在感を示している。2007年12 月に発表した「金融・資本市場競争力強化プラン」では、我が国金融・資本市場の国際的な競争力を高めるためには、資金調達者である企業がガバナンス強化に取り組み、投資資金を惹き付ける必要があるという認識を打ち出し、その後の取組みに繋げた。

U.金融審議会スタディグループ報告
上記Tのプランの策定を提言した「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」は2009年6 月に最終報告をとりまとめ、指名委員会等設置会社を好ましいガバナンス機構に位置付けるとともに、社外取締役の選任の推進・企業集団法制の整備など、ガバナンス関連の提言も積極的に行い、会社法改正作業に影響を与えた。

V.金融監督行政への反映
金融庁は2014 年2 月、金融監督行政において指名委員会等設置会社への移行を誘導する内容の監督指針改定案を公表した(同年6 月実施)。有識者会合の提言を受けた措置であるとされるが、公表された提言に記載されていない内容を含むものとなっており、上記Uのスタディグループ報告が影響したものと推測される。

W.スチュワードシップ・コードの制定
金融庁は2014 年2 月、機関投資家の行動原則を定めるスチュワードシップ・コードをとりまとめた。 海外では、企業の自助努力と投資家の働きかけがガバナンス強化に向けた「車の両輪」であるとされ、機関投資家が投資先企業にガバナンス強化を働きかけることが期待されている。

X.コーポレートガバナンス・コードの制定
金融庁・東京証券取引所は2015 年3 月、コーポレートガバナンス・コードをとりまとめた。上場会社がとるべき行動などを5 つの基本原則、30 の原則、38 の補充原則に整理した本コードは、原則を遵守するかしないかの選択を各社に委ね、その一方で不遵守の場合には説明責任を課すComply or Explainの枠組みを取り入れた。

Y.その後の取組み
上記WとXで説明した2 つのコードは、いずれも日本再興戦略(閣議決定)に基づき内閣の重要課題として実施された。その後は、導入した枠組みを実践するフェーズに入っているが、企業の取組事例の収集・分析と金融機関の取組を促す動きが注目される。
Z.残された課題:今後の展望に代えて残された課題は、@攻めの企業風土に変える取組み、A望ましいガバナンス機構を巡る議論の活性化、Bコーポレートガバナンス・コード導入を踏まえた会社法制の見直しである。

   
 

Insurance Linked Securities(ILS)がもたらす変化
―資本市場による保険リスクの引受け― (PDF2,023KB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 鈴木 久子

   
 

T.はじめに
近年、保険業界において急速に関心が高まるデジタル化という大きな変革(Disruption)の流れにくわえて、Disruption につながるもう1つの動きとして注目が集まるのが、保険リスクの新たな引受・移転方法として普及が進むInsurance Linked Securities(ILS)である。

U.ILS の主な仕組みと特徴
ILS によるリスク移転と、従来の保険/再保険によるリスク移転の大きな違いは、ILS では、リスク引受のために充てられる資本(Capital)が、保険/再保険会社自身が保有する資本を充てるのではなく、リスクを証券化(流動化)することを通じて、資本市場の投資家からの投資によって集められる点である。元受保険会社は、従来、再保険会社やロイズ保険市場との再保険取引等を通じてリスクの移転を行ってきた。ILS 取引は、元受保険会社にとって、これらの伝統的なリスク移転手法に代替する新たなリスク移 転方法と位置づけることができるだろう。

V.再保険業界への影響
従来の再保険の機能を一部代替することができるILS の普及は、再保険業界に競争環境の激化や収益性の 低下、ひいては新たなビジネスモデル模索の機運をもたらしている。

W.ロイズ保険市場への影響
ロイズ保険市場のILS に対する姿勢はこの数年で変化を見せており、近年は、ILS 資本をロイズ保険市場に新たなイノベーションと多様化のチャンスをもたらす重要なものとして歓迎する好意的な姿勢へと変化してきている。イギリス財務省は、ロンドンをILS ビジネスにおける世界のハブとすることを目指し た新規制の導入を進めている。

X.元受保険業界への影響
ILS ビジネスを行う事業者の中には、元受保険会社を飛び越えてオリジナルのリスクに自らダイレクトにアクセスし、資本市場へのリスク移転を行う動きも見られる。また、こうした元受リスクへのダイレク トなアクセスを目指す動きは、再保険業界にも広がりつつある。

Y.ILS の新たな活用可能性
ブロックチェーン等InsurTech の活用によるILS 取引の拡大、公的セクターとの協働による公的補償スキームにおけるILS の利用拡大に加え、大企業のコーポレートリスクやサイバーリスク、ランオフリスク など新たなリスク領域を取り込むことで、ILSのさらなる普及が期待されている。

Z.おわりに
ILS の成長がどこまで拡大するか正確な予測は難しいが、ILS の普及によって、「リスク」と「資本」 を結びつけるという元受保険・再保険・ロイズ保険市場が従来担ってきた役割、そしてバリューチェーンに変化がもたされつつある現状は、それぞれがこれまで担ってきた役割とそれを支えてきた能力について、もう一度見つめなおす良い契機を与えてくれるのではないだろうか。

   
 

米国医賠危機への対策にみる保険会社の医療事故への関わり方の変化 (PDF801K)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 吉田 順一

   
 

T.はじめに
我が国でも医療事故と訴訟の問題については度々議論されているが、医療事故が抱える問題は複雑であり、全ての問題に対処できる解決策は見いだせていないのが現状である。米国でも医療事故が医療サービス供給の減少や医療費増加をもたらしているとして議論が続いている。本稿では、米国における医療過誤賠償責任保険に関わる問題やその対策を改めて概観し、その背景にある医療事故の抱える問題の複雑性を踏まえた上で、保険会社の関わり方について考えたい。

U.医賠危機と医療事故
米国では過去3 度の医賠危機を経験していると言われ、これは医療過誤賠償請求の増加や陪審評決額の上昇等によって引き起こされたと考えられている。医療過誤賠償請求に関わる問題の一つは、患者等には医療事故の原因が医療提供者の過失によるのかどうかの判断が困難であることだが、過去の調査からは、医師にとっても断定的な判断は困難であるということが示されている。医療は、治療が奏功するとは限らないという不確実性を有しているうえに、医療事故が発生した場合の過失の有無についても断定的な判断が困難であるなど、その複雑性から医療過誤賠償請求や医療過誤訴訟に繋がりやすいと考えられる。

V.米国での医賠危機への対策
医賠危機に対し、米国では従来から損害賠償責任の上限額設定といった不法行為法改革というアプローチがとられてきたが、これは医療過誤賠償請求を減少させるとは考えにくく、本質的な解決策にはなっていない。CRP(Communication and Resolution Program)や無過失補償制度というアプローチは、医療事故の抱える問題の複雑性に対処しようとしているものである。

W.おわりに
不法行為責任に基づく賠償請求システムは、医療過誤被害者の救済方法としては十分とは言えない。米国における医療事故や医療過誤への対応の変化からは、従来の賠償請求システムから円満・円滑な紛争解決へと、保険会社の医療事故への関わり方に変化が求められてきているということが示唆される。

   

イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向とフランスの民間介護保険(PDF871K)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 高守 徹  副主任研究員 内田 真穂

   
 

T.はじめに
損保ジャパン日本興亜総合研究所ではヨーロッパにおける損害保険の主要市場であるイギリス、ドイツおよびフランスの損害保険市場に関するレポートを毎年公表している。本稿は主に2015 年(一部2014年)のデータを用いた最新版である。

U.各損害保険市場の動向
イギリスの2015 年の元受保険料は486 億ポンドと前年から9.5%の増加となった。ドイツの2015 年の元受保険料は990 億ユーロと、前年から2.2%の増加となった。フランスの2015 年の元受保険料は731 億ユーロと2014 年から2.5%の増加となった。
保険引受収支を見ると、イギリスの2015 年の損害保険全種目の損害率は64.3%、事業費率は33.5%、コンバインド・レシオは97.8 であった。ドイツの2015 年の損害保険全種目の損害率は76.3%、事業費率は19.7%、コンバインド・レシオは96.0 であった。フランスの2014 年の損害保険全種目の損害率は76.0%、事業費率は24.0%、コンバインド・レシオは100.0 であった。

V.フランスの民間介護保険の動向
フランスの公的な介護保障は、社会福祉制度の一環として運営され、要介護度に応じて在宅または施設における介護サービス費を支給する個別自立手当(APA)が主体となっている。ただし、公的な介護保障では必要な介護費用を賄えないと言われており、民間介護保険はこれを補完する役割を担っている。フランスにおける2010 年の民間介護保険の加入者数は、約550 万人、保険料は約5 億ユーロであり、2012 年、加入者数は約600 万人まで増加したと言われている。OECD の報告書によるとフランスの民間介護保険加入率は相対的に高いと評価されており、職域等において団体契約で加入する補足的医療保険に付帯した民間介護保険への加入者が多いことが寄与しているものとみられる。2013 年には、民間介護保険の普及を図るため、保険協会が一定基準を満たした商品を認証する仕組み(GAD マーク)を導入しているが、現在のところ消費者に広く認知されるまでには至っていない。保険会社等は、介護関連のサービス提供等に注力しつつ、ブランド力、評判を得る戦略を採っている状況にある。

 

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