損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2016年9月30日発行 Vol.69

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1. 米国ヘルスケア改革本格実施後の新しいヘルスケアサービス提供システムと健康保険者
―健康保険者の事業モデル改革とヘルスケアサービス提供組織のマネジメント―
  2. 外国法の域外適用
  3. EU加盟国におけるテロ保険制度
  4. 米国損害保険市場の動向
―2015年の実績および異業種提携が実現する新しい比較募集―

 
米国ヘルスケア改革本格実施後の新しいヘルスケアサービス提供システムと健康保険者 ―健康保険者の事業モデル改革とヘルスケアサービス提供組織のマネジメント― (PDF1.1MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.イノベーションを重視する米国ヘルスケア改革
2010年から進められているヘルスケア改革では、イノベーションを重視しつつ、健康保険市場改革を推進している。ヘルスケア改革は健康保険者に大きなインパクトを与え、健康保険者は、その事業モデルの革新に取り組んでいる。ヘルスケアプロバイダー側のイノベーションである、新しいヘルスケアサービス提供システムのACOに積極的に関与している。この動向をどのように理解することができるだろうか。

U.ACAが健康保険者に与えたインパクトと事業モデルの革新
ヘルスケア改革は、伝統的保険システムの基盤を崩す強制措置を伴っている。危険選択した良好保険集団の組成維持による利益獲得という伝統的な事業モデルが従来のままでは維持できない状況に健康保険者を追い込んだ。このため、健康保険者は、競争減殺と規模の利益の追求のためにM&Aを積極的に進める一方、事業モデルの転換を模索している。

V.ACOに関与し、事業モデルを革新しつつある健康保険者
危険選択した良好保険集団の組成維持による利益獲得という伝統的な事業モデルではなく、引受保険集団の危険度低下によって利益を獲得する、新しい事業モデルに適合的な取組がある。ACOは、主として長期のケアが必要な慢性疾患・高齢者団体、すなわち慢性疾患等の疾病リスクがある集団を対象として、集団の構成員の疾病予防を促進し集団全体の健康リスクを改善する、Population Health Managementと呼ばれる取組を行っている。健康保険者は、ACOに関与して、疾病リスクを低減する事業モデルの実現に取り組み、事業モデルの革新を進めている。

W.ACOの意義と評価
ACOの意義は、ヘルスケアサービス利用者へ説明責任を果たし、品質と経費節減の実現を図っていることである。また、ACOの仕組みと最新の情報通信技術を駆使したPopulation Health Managementは、イノベーションの取組として高い評価を受けている。

X.ACOにおける組織マネジメント機能の必要性と重要性
ACOの目標達成には、複数のヘルスケアプロバイダーが連携して、患者等に治療処置等のヘルスケアサービスを提供する必要がある。それ故、関係者の活動を連携・組織化する、組織マネジメント機能が不可欠である。

Y.ヘルスケアサービス事業におけるマネジメント層の育成システム
ACOにおける組織マネジメント機能は、その機能を担う人材を必要とするが、米国ではマネジメント層の育成システムの仕組みが整っている。その仕組みの特徴は、企業内育成ではなく労働市場を移動して育成されること、Jobの紹介システムと連動したプラクティカルな手法が実施されていること、およびマネジメント階層それぞれについて教育システムが整備されていることである。

Z.米国ヘルスケア改革の特徴と示唆
米国固有の特徴として、イノベーションへの期待の大きさと楽観主義およびValue-Based志向がある。このほかに、医療保障アクセスの保障のために民間健康保険者を活用していること、漸進主義であること、米国では過去の沿革もあり、ヘルスケア費用支払側とヘルスケアサービス提供側を統合したモデルがいまも現存し、ACO運営にも導入されていること、広い労働市場内での移動があるので多様な経験を積むことができることがある。

   
 

外国法の域外適用(PDF843KB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 取締役 隅山 正敏

   
 

Ⅰ.はじめに および U.域外適用
企業活動の国際化につれて海外法令への目配りが必要になっている。企業が恐れる「不意打ち」は、自国や進出先の国における行為や取引に対して、第三国の法令が適用される事態である。この「域外適用」を本稿で取り上げる。

V.カルテル規制(競争法)
古くから域外適用が行われてきた分野が「国際カルテル」である。カルテルの効果(価格の高止まり)が自国で生じている限り、カルテル合意がどこでなされようと、「自国法を域外適用することができる」とする「効果主義」の考え方がとられている。

W.M&A規制(競争法・証券法)
域外適用に備えるのが一般的となっている分野が「M&A」である。日本企業同士の合併であっても海外当局の審査を受けることがあり、スケジュールの設定に際して細心の注意が必要となっている。

X.租税回避(税法)
最近、脚光を浴びている分野が「租税回避」である。日本企業にも適用される米国「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」は、かつて行われた金融機関による脱税幇助を発端として、その再発防止を目指す立法である。

Y.企業取引を巡る賄賂(刑法)
巨額の罰金で注目を集める分野が「賄賂」である。先駆となる米国「海外腐敗行為防止法(FCPA)」が2つの国際条約に繋がり、現在では、企業が賄賂を贈ると、自国・贈賄先の国を含む複数の国の当局から摘発を受け得る状況になっている。

Z.人権侵害(CSR)
企業の自発的な取組みが中心であった「CSR」分野でも域外適用が生じている。先駆となる英国「現代奴隷法」は、国際連合が作成した報告書の延長線上にあり、他の国に広がる可能性を秘める。

[.その他の域外適用事例 および \.まとめ
これら以外の分野でも域外適用が発生している。企業が不意打ちを避けるためには、国際的な舞台における他社不祥事を注視する必要がある。

   
 

EU加盟国におけるテロ保険制度(PDF826KB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 松野 篤

   
 

Ⅰ.はじめに
EU加盟国のうち、ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、ベルギー、オーストリア、およびデンマークの8ヶ国に、保険会社が共同でテロリスクの一部あるいはすべてを引き受ける仕組み(テロ保険制度)が存在している。8ヶ国のテロ保険制度は多様であるが、設立の目的および補償の構造で共通点が見られる。

U.EU各国のテロ保険制度の概要
テロリスクには、データの不足、逆選択の可能性、政府の行動によるリスク変動の可能性、および損害額が膨大になる可能性、というリスク特性があるとされ、保険会社による引き受けを難しくしている。テロ保険制度はこれらのリスク特性を許容して、共同で安定的にテロリスクの引き受けを行うための仕組みである。
EU加盟国におけるテロ保険制度は、民間保険市場の失敗を設立の契機としている。特に多くのテロ保険制度は2001年の米国同時多発テロ事件後の再保険市場のキャパシティ縮小に対応するため設立されている。
テロ保険制度は多層構造をとり、支払保険金が下層の上限額を超過しても、上層が超過分を補う仕組みとなっている。ほとんどの制度では、保険金支払いの最後の担い手として、政府による補償がある。

V.テロの傾向とテロ保険制度の課題
一般的に政府の関与は民間保険市場圧迫とも考えられるが、テロリスクについては政府の関与がなくなれば、多くの企業がカバーのために多大なコストを要することになることが予想され、テロリスクの安定的な引き受けのため、政府の関与がまったくなくなることは考えにくい。

W.おわりに
共通点および相違点を制度間で比較するために、文末にEU8ヶ国におけるテロ保険制度の概要を一覧表で掲載した。

   
 

米国損害保険市場の動向
―2015年の実績および異業種提携が実現する新しい比較募集― (PDF1.2MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 新添 麻衣

   
 

T.はじめに
本稿では、米国損害保険市場の概況を2015年データに基づいて整理する。またトピックとして、主力の個人保険分野において、異業種との提携により保険会社が自社Webサイトで実践する新しい比較募集の取組みを紹介する。

U.米国損害保険市場の動向
2015年の正味収入保険料は前年比3.5%増の5,202億ドルとなった。2011年後半から2014年に行われた保険料引上げの反動で伸び率は鈍化した。2015年は異常災害による損害が平年より少なかったものの、竜巻や寒波などによる自然災害は多かったため、損害率は2014年の69.0%から69.3%、コンバインド・レシオは2014年の97.2から97.7に悪化した。利回りの低下などを受けて、正味資産運用利益は前年比11.4%減、実現利益も減少し、純利益は前年比10.1%減となった。契約者剰余金は前年比0.2%減となった。

V.主要種目の成績概況
2015年の個人保険分野の正味収入保険料は前年比4.7%増の2,829億ドルとなった。個人自動車保険の損害率は2014年の77.2%から79.4%に悪化したが、ホームオーナーズ保険は2014年の62.7%から61.9%に改善した。自動車保険の悪化が響き、個人保険分野全体の損害率は2014年の72.9%から74.2%へと悪化し、コンバインド・レシオは100.7と赤字に転落した。企業保険分野の正味収入保険料は、前年比2.1%増の2,295億ドルとなった。損害率は、2014年の63.8%から62.6%に改善した。

W.異業種提携が実現する新しい比較募集
消費者の保険購入の検討手段として、インターネットが存在感を増している。一部の保険会社では、自社のWebサイトで見積りを行うユーザーに対し、他社の広告や見積りを併せて提供するという斬新な比較募集の取組みが始まっている。背後には、異業種との提携により導入されたオンラインプラットフォームの存在があり、ユーザーと保険会社の双方にメリットをもたらす新たな募集形態の出現は注目に値する。

X.おわりに
2015年の米国損害保険市場は、保険料の引上げの鈍化、主力の自動車保険の損害率悪化、低金利による運用難という環境下にあったものの、大きな自然災害に見舞われなかったことから、3年連続で黒字を確保した。保険会社は、IT・デジタル分野にリソースを投入しており、アンダーライティングの適正化やプライシングの精緻化のほか、顧客とのコミュニケーション手段のデジタル化を進めている。こうした取組みが各社の今後を左右すると見られる。

   
 

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