損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2015年9月30日発行 Vol.67

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1.民間保険から見たドイツの健康保険システムの特徴
―公的保険者が競争し民間保険が公的保険を補完し代替するシステム―
  2. 保険業界のデジタル化の現状と取り組み
―行動特性データにリンクする医療保険―
  3.米国損害保険市場の動向
―2014年の実績およびGoogleの価格比較サイト参入―

 
民間保険から見たドイツの健康保険システムの特徴
―公的保険者が競争し民間保険が公的保険を補完し代替するシステム― (PDF:1.1MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

Ⅰ.はじめに
多くの先進国では、多様なニーズに対応する民間健康保険が公的健康保険制度を補完することが多い。ドイツは社会保険発祥の国で日本の社会保険の先例であるとの理解から、早くから国民全員が加入する皆保険が実現し、民間保険は公的保険の補完であるに違いないと即断しやすい。しかし、実態は違っている。最近まで全国民が健康保険に加入する義務がなく、国民皆保険ではなかった。ドイツの健康保険システムは、公的保険者が競争し民間保険が公的保険を補完し代替するという他に例が少ないシステムとなっている。ドイツ独特の健康保険システムの特徴を、保険市場で競争をしている民間保険事業者の視点から理解する。

Ⅱ.健康保険システムの概要と健康保険者・制度改革の沿革
ドイツの健康保険システムでは、異なる原理で運営される健康保険システムが複雑な形で二つ並立している。一つは、主として加入義務がある被用者を対象とする法定健康保険システムであり、もう一つは任意加入の民間健康保険システムである。法定健康保険システムは、ドイツでは社会保険とされているが、日本と異なり政府が運営することはなく、当事者自治の原則に基づき被用者と雇用主が保険料を負担する「疾病金庫」と呼ばれる保険者と、医療サービス提供側の医師等の専門職業団体とが協議をして運営するコーポラティブな方法が採用されている。社会保険と観念されている法定健康保険には、国民全員が加入する義務はなく、被用者等が加入する義務がある一方、被用者以外の者も一定の条件の下で任意に加入することができる。被用者のうち、報酬が高い者には法定健康保険に代替する民間健康保険に加入する選択肢もある。また、法定健康保険の加入者は、法定健康保険を補完する民間健康保険を利用することもできる。法定健康保険の保険者である、疾病金庫は、中世に遡る古い歴史があり、社会保険発祥の頃には、強制加入の疾病金庫、任意加入の疾病金庫の両方が存在し、金庫の任意設立や金庫選択の自由を認められていたという経緯から、このような複雑な仕組みとなった。

Ⅲ.民間健康保険市場の現状
ドイツでは民間健康保険者と公的医療保険である法定健康保険システムの保険者である疾病金庫との競合があり、公的保険者が実質上民間健康保険市場のプレーヤーとなっている点が特徴的である。1990年代から競争促進的政策が導入され保険加入者の選択肢が拡大した結果、多くの保険加入者は疾病金庫間を移動した。さらに、疾病金庫と民間健康保険者の間も多く移動した。

W.公的保険を代替する民間保険者の事業形態
民間健康保険者は、民間健康保険者以外に疾病金庫との競合もあり、その競争条件は、制度改革における政治的妥協によって大きく左右される。また、民間健康保険が社会保険を代替する方法は、加入したら加入者が脱退しない限り終身補償を提供するために特異な事業形態を取っており、その事業特性に応じた事業リスクマネジメントが行われている。

X.健康保険システムの特徴と民間健康保険者の役割
最大の特徴は、公的健康保険を代替する民間健康保険の存在であるが、健康保険システムを主導する原理が単純ではなくそれぞれ矛盾し相克しており、政治的信条の衝突妥協のなかで制度改革が重ねられた結果形成された複雑な仕組みも特徴である。さらに、法定健康保険システムの保険者である疾病金庫同士が競争し、民間健康保険者の間でも、疾病金庫と民間健康保険者も競争する競争重視も特徴である。ドイツの民間健康保険者の役割として、公的な制度の補完と代替があるが、代替保険は、公的健康保険に代わる以上に医療サービスの優遇措置を求めるニーズに応えている。

   
 

保険業界のデジタル化の現状と取り組み
―行動特性データにリンクする医療保険― (PDF:1.3MB)

   
 

= 要 約 =
副主任研究員 鈴木 久子

   
 

T.はじめに
近年、保険業界において「デジタル化」への関心が急速に高まっている。ここで言うデジタル化とは、インターネットが普及した90年代以降に進められてきた、情報のペーパレス化や電子化、ITシステム導入による業務プロセスの効率化を目指したデジタル化「Digitaization」とは異なり、「Digitalization」あるいは「Digital Transformation(デジタル化による変革)」と呼ばれるものである。

U.保険業界のデジタル化の認識と現状
保険会社を対象にしたデジタル化に関する意識調査では、75%の保険会社が今後5年以内にデジタル化によって保険のビジネスモデルを基礎から変えるような変革が起きると予測している。一方、保険会社のデジタル化への取り組み状況については、デジタル化戦略を策定している保険会社の割合は全体の半数以下の47%に留まっているなど、多くの会社は未だ取り組みの初歩段階にある。

V.AXAのDigital Transformationへの取り組み
こうした保険業界の現状の中、デジタル化への取り組みにおいて先行している大手保険グループの1つであるAXAグループでは、近年、Digital Transformationを最優先の戦略課題として掲げ、業界のデジタル化におけるリーディングカンパニーを目指し積極的な取り組みを行っている。
デジタル化への取り組みを担う主要な組織として、Digital Transformation実現のために設置されたAXA Lab、イノベーション企業への投資を行うAXA Strategic Ventures、ビッグデータの分析を担うData Innovation Labが設置されている。

W.行動特性データにリンクする医療保険
デジタル化によって起こりつつある変革の一例として、デジタル機器によって収集された行動特性データにリンクした医療保険がある。従来の医療保険が、年齢、性別、病歴等の「静的データ」に基づいてリスクを評価していたのに対し、行動特性データに基づく医療保険では、ウェアラブル端末等の活用によって、健康改善につながる行動を促して病気になるリスクを減少させるとともに、健康改善結果および改善行動に関わるリアルタイムな「動的データ」を用いて個々人の行動特性の分析、リスク評価等を行い保険料に反映させる。

X.DiscoveryのVitality Program
行動特性データに基づく医療保険を提供する保険会社として、近年、世界的に高い評価を集めている保険会社に、南アフリカのDiscoveryがある。同社は1997年よりVitality Programという健康改善プログラムを付帯した医療保険の販売を行っており、現在では世界中で600万人超が加入する世界最大級の健康改善プログラムに成長してきている。

Y.おわりに
今後Digital Transformationへの取り組みが加速すれば、これまで他の業界に比べるとテクノロジーによる影響が小さく、テクノロジーによる変革やイノベーションが起こるスピードが遅い業界だと言われてきた保険業界において、競争軸の1つに先端テクノロジーの獲得競争が加わる日も遠くないかもしれない。

   
 

米国損害保険市場の動向
―2014年の実績およびGoogleの価格比較サイト参入― (PDF:1.9MB)

   
 

= 要 約 =
副主任研究員 廣岡 知、 研究員 吉成 純子

   
 

T.はじめに
本稿では、米国損害保険市場の概況を2014年のデータに基づいて整理する。また、トピックとして、米国カリフォルニア州におけるGoogleの価格比較サイト参入に関して、比較サイトが個人自動車保険の販売チャネルで大きな割合を占める英国と比較しつつ、その概要及び販売チャネルに与える影響を取り上げる。

U.米国損害保険市場の動向
2014年の正味収入保険料は前年比4.3%増加して5,026億ドルとなった。保険料率の引上げはまだ続いているが、伸び率は昨年に比べ鈍化している。2014年は異常災害による損害が平年よりは低かったものの昨年より増加したことから、損害率は悪化し、コンバインド・レシオは2013年の96.3から97.2に悪化した。正味資産運用利益は前年比11.6%増えたが、実現利益の減少などもあり、純利益は前年比9.5%減となった。契約者剰余金は3.6%増となり、2013年の増率11.8%から大幅に減少した。

V.主要種目の成績概況
2014年の個人保険分野の正味収入保険料は前年比5.5%増の2,701億ドルとなった。個人自動車保険の損害率は2013年の75.9%から77.2%に悪化、ホームオーナーズ保険の損害率も2013年の60.0%から62.7%へと悪化した。個人保険分野全体の損害率は、2013年の71.3%から72.9%へと悪化した。企業保険分野の正味収入保険料は、米国景気の緩やかな回復や料率引上げなどの影響により前年比3.1%増の2,249億ドルとなった。損害率については、2013年の62.7%から63.7%へと悪化した。

W.Googleの価格比較サイト参入
Googleは2015年3月にカリフォルニア州における個人自動車保険の比較サイト事業に参入した。米国での参入に先んじて、2012年9月には、英国における比較サイト事業に参入している。比較サイト・ダイレクトレスポンスが主流の英国と異なり、米国の個人自動車保険の販売では、代理店が主要なチャネルであるが、近年ダイレクトレスポンスが拡大しており、今後の動向を注視していきたい。

X.おわりに
2014年の米国損害保険市場は、損害率が悪化し、引き続き競争の厳しい市場環境や低金利環境下にあるものの、景気回復や料率の引上げが続いたこと、比較的大きな自然災害に見舞われなかったこと等から、結果、収益を残すことができた。保険会社は、引受ガイドラインの厳格化やデータ分析・リスク別料率設定等の精緻化によりリスク管理の強化を行うとともに、顧客のニーズに合わせた戦略的なIT投資を進めている。

   
 

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