損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2015年3月31日発行 Vol.66

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
 
掲載論文: 1. 米国テロリズム保険制度の動向
  2. 米国ヘルスケア改革におけるイノベーションと健康保険者
−ヘルスケア提供システムのイノベーションとしてのACOモデルへの期待−
  3. ブラジルの健康保険制度
― 統一医療システムSUS と民間健康保険SHI ―
  4. イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向

 
米国テロリズム保険制度の動向(PDF:880KB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員 杉山 優紀

   
 

Ⅰ.はじめに
米国では現在、企業がテロリスクに備える1つの方法としてテロ保険が販売されており、その損害が一定規模を超えた場合には法律により政府補償が用意されている。2001年9月11日の同時多発テロ当時の米国では、テロ被害に対する補償は企業分野の保険で一般的にカバーされるケースが多く、その付保損害額は約316億ドルという莫大な金額となった。このため9.11後は多くの保険会社がテロを免責としたり、保険料を大幅に引き上げる等の対応を取らざるを得ず、企業の資金手当てが滞り、経済活動全般に大きな支障をきたすこととなった。この事態に対応すべく発効されたのがテロリズムリスク保険法(TRIA)である。本稿では、TRIAによるテロリズム保険制度の動向を中心に紹介する。

Ⅱ.テロの現状
テロは2013年だけで全世界で約10,000件発生し、約18,000人もの人命が失われている。この発生件数のうち6割はイラク、アフガニスタン、シリア、パキスタン、ナイジェリアの5か国が占めるとされるが、OECD諸国にとってもテロは大きな脅威となっている。近年ではテロ組織がメッセージを発信したり、新たな仲間を募るためのツールとしてインターネットやソーシャルメディアが頻繁に利用されており、米国等ではそれらのメッセージに触発された単独犯によるテロも増加している。

Ⅲ.TRIA
TRIAは、テロの危険が存在する状況下であっても、予め政府と保険業界が損害を負担し合う仕組みを作ることで企業保険が機能し、企業活動が円滑に進むことを目的として2002年11月に発効された法律である。これに基づき、一定の規模を上回るテロ損害が発生した場合には政府補償が用意されている。TRIAは2005年と2007年に期間延長がなされてきたが、2014年末には法案が成立せず、一旦期限切れとなった。しかし、年明けの2015年1月には改定法が成立し、6年間の期間延長が確定した。

Ⅳ.米国におけるテロ保険
TRIAではテロ損害に対する補償を保険会社が提供することを必須としているが、テロ保険への加入は基本的に各企業の任意となっている。そのため、テロ保険の加入率はその企業の規模や地域、業種、保険種目によって差がある。米国では都市部に主要機関を持つ教育、医療、金融等といった分野で加入率が高い一方、製造業等では低い傾向にある。また、州単位で見てもニューヨーク等大都市圏を含む北東部の州では高い傾向に、主に西部や中西部の州では低い傾向にある。

Ⅴ.欧州各国のテロ保険
欧州の国々においてもテロの脅威は大きなものであり、多くの国では民間保険業界からの補償だけでなく、政府が支援するテロ保険制度や再保険、資金プールやファンドといったものが運営されている。英国、スペインでは国内問題を背景に古くからテロに対する政府の補償が行われてきている一方、ドイツ、フランスでは9.11をきっかけに制度が発足している。

Ⅵ.おわりに
これまで多くの人命と企業の資産がテロによって失われてきたものの、テロリスクは保険引受が非常に難しいリスクであるとされている。近年ではテロの手法や主体も多様化してきており、その事前察知は困難さを極めている。しかしながら、こういった状況下だからこそ、発生を未然に防ぐ対策に加え、万が一発生した場合の手当てをすることが重要になっており、その一つとして保険の役割も増していると考えられる。

   
 
米国ヘルスケア改革におけるイノベーションと健康保険者
−ヘルスケア提供システムのイノベーションとしてのACOモデルへの期待− (PDF:1.3MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

Ⅰ.米国ヘルスケア改革のイノベーションとACOモデル
米国ヘルスケア改革では、イノベーションと呼ぶべき新しい取組がなされている。大きなイノベーションの取組としては、政府が開設運営する保険加入インターネットサイトで個人が健康保険に加入する仕組みを導入したことが挙げられる。もう一つが、ヘルスケアサービス提供者が連携し、健康保険者と協力して、高品質なヘルスケアサービスを提供し、かつ医療資源の効率的効果的利用を図り、ひいては医療費増加の増勢の低減を実現しようとする、ACOモデルである。

Ⅱ.米国ヘルスケアシステムの特徴とACOモデルの背景
米国でイノバティブなACOモデルが導入展開される背景には、疾病パターンが慢性疾患へシフトしたため対処できない既存のシステムを改革する必要があり、また増加し続ける医療費への対処が必要であるという先進国共通の状況と、当事者が試行錯誤を伴う市場取引で多様なモデル創出に熱心に取り組み、公的部門がイノベーションを促進しているという米国独自の状況がある。

Ⅲ.連邦政府によるACOモデルの導入とイノベーションの促進策
連邦政府は、高齢者向公的ヘルスケアサービス制度であるメディケアを運営している。メディケアは、米国全体のヘルスケアサービスの資金循環でも大きな存在となっており、その影響力は大きい。そのメディケアでACOモデルが実施されている。連邦政府はこれまで、イノベーションを促進し、ACOモデルについても促進を図っている。

Ⅳ.多様なACOモデルと成立条件・課題
ACOモデルがヘルスケア改革法へ導入されたのは、先行的研究の提言と先行的取組の成果を評価した経緯がある。研究の提言も連邦議会も、医療費支出の増加を緩やかにするのと同時に、ヘルスケアサービスの品質も向上させなければならないとの問題意識があった。その問題意識に応えたのがACOモデルであった。 

Ⅴ.多様なACOモデルと成立条件・課題
ACOモデルは多様にあるが、ACOモデルを類型化して成立条件と課題を検討すると、ケアコーディネーション(Care Coordination)、パフォーマンス評価指標を計測管理できるシステムの運用、マネジメント活動が成立条件であり、そのためにリーダーシップと財務的リスクに対するリスクマネジメントが必要である。

Ⅵ.民間健康保険者のACOモデル導入と民間健康保険者の役割
民間健康保険者も、連邦政府の取組に追随するように、ACOモデルを積極的に導入し展開を図っている。民間健康保険者がACOモデルへ関与し果たす役割は、システム投資への協力、保険リスクに関する専門性の提供および患者集団と医療サービス関係者を結びつけるファシリテーターである。特にACOが負担する財務的リスクは、保険者が扱ってきた保険リスクと同質であり、この面での寄与が可能である。

Ⅶ. ACO モデルの今後
多く連邦政府によるACOモデルも、民間健康保険者によるACOモデルも始まったばかりで、その成果を判断する時期ではない。ACOモデルを実際に運用するには、ACOモデルの成立条件を満たし課題を解決していく必要があるが、それは難しい挑戦である。しかし、実務家は楽観的であり、今後のイノベーションへの期待は大きい。事業環境に柔軟性があり、試行錯誤の実践を重ねていけば、今後ACOモデルはまだ変化し進化すると予想できる。

   
 
ブラジルの健康保険制度
― 統一医療システムSUS と民間健康保険SHI ― (PDF:1.9MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 主任研究員 槙 絵美子、 研究員 加藤 麻衣

   
 

Ⅰ.はじめに
ブラジルにおいて医療保障は、憲法に定めた「国家の義務・国民の権利」であり、税収を財源とするSUS(Sistema Único de Saúde:統一医療システム)をベースに、国民皆保険を実施することが掲げられている。しかし現実的には、公費のみで2億人を超えるブラジル国民の皆保険を実現することはできず、憲法は同時にSUSを補足する役割として民間部門を位置付けている。本稿では、国と民間の制度が共存するブラジルの健康保険制度を紹介する。

Ⅱ.経済動向・人口動態
ブラジル経済は内需と資源輸出に支えられ成長してきたが、世界経済の停滞を背景に中国などの資源需要が弱まると、景気は減速し始めた。足元の経済成長率を見ると、2014年は0.3%と他のBRICs諸国と比較しても低調である。また高齢化が進行している。

Ⅲ.ブラジルのヘルスシステム
ブラジルの医療施設数は年々増加しており公立と民間を合わせるとおよそ9.4万に達するものの、その大部分はプライマリ・ケアに対応するもので、入院に対応できる施設はまだまだ不足している。加えて、都市部に集中しているため地理的な格差も生じている。ファイナンス構造は、民間支出が財政支出を上回る。

Ⅳ.統一医療システムSUS(Sistema Único de Saúde)
1988年に制定された憲法196条によって国家は国民の健康を守る義務があることが明示された。さらに憲法198条で公共の保健活動と役務は単一の制度によって提供されると定め、全ての国民が無償であらゆる医療サービスにアクセスできるという理念を掲げる医療統一システムSUSが創設された。

Ⅴ.民間健康保険SHI(Saúde Splementar, Supplementary Health Insurance and Plans)
任意加入の民間健康保険には、現在国民の約1/4に相当する50.6百万人が加入しており、ブラジル保険市場における収入保険料の38%を占める最大種目として成長している。加入者の8割は団体契約による加入であり、主に企業従業員向けの福利厚生の健康保険として利用されている。民間健康保険はSUSの保障と重複する内容までも対応する第一次的な保険となっており、実質的にはSUSと並列する二重構造となっている。ブラジル独自の発展の経緯を経て数多くの保険事業者が存在するが、近年の市場環境の変化により統廃合が進んでいる。

Ⅵ.おわりに
ブラジルの健康保険制度は開発途上にあり、目指す理想への到達にはまだまだ乗り越えるべき高い壁がある。官民連携による医療保障を推進していくための議論の活発化と対応策の実行が待たれている。

   
 
イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向(PDF:1.6MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 副主任研究員 喜田 亜紀子、副主任研究員 鈴木 久子

   
 

Ⅰ.はじめに
本稿では、当研究所が継続して行っている欧州先進国に関する調査の一環として、イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の概況を報告するとともに、近年の自然災害増加に伴う各国の洪水保険の動向について紹介する。さらに、各国で堅調な成長が見られる民間医療保険市場の現状と動向について紹介する。

Ⅱ.イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向
イギリスにおける2013年度の損害保険の元受保険料は451億ポンドと、前年から0.7%の増加となった。コンバインド・レシオは98.0であった。ドイツにおける2013年度の損害保険の元受保険料は943億ユーロと前年から2.3%の増加となった。コンバインド・レシオは103.5であった。フランスにおける2013年度の損害保険の元受保険料は695億ユーロと、前年から2.1%の増加となった。近年、気候変動により自然災害が増加しており、欧州にとって洪水リスクに備えることは重要な課題となっている。イギリスでは新たな洪水保険制度「Flood Re」が検討されており、ドイツでは国民の洪水に対する意識を高め、洪水保険への加入率を上げる取り組みがなされている。フランスには、自然災害保険制度「Cat Nat」がある。また近年、官民が一体となって保険と防災の連携を強化する取り組みが進んできている。

Ⅲ.イギリス、ドイツ、フランスの民間医療保険市場の動向
イギリス、ドイツ、フランスの民間医療保険市場は、近年の高齢化の進行および医療技術の進歩による医療費コストの上昇を背景にいずれも拡大傾向にある。しかし、増加する医療費コストがどのような形で民間医療保険市場の拡大に結び付いているか、また、その影響の大小については、各国ごと異なる状況が存在している。3ヵ国はともに公的医療保障制度を有しているが、その保障内容や制度の在り方は各国の歴史的背景や文化、経済状況等により異なっており、民間医療保険もまた公的医療保障制度の違いに応じて、担っている役割や保障内容は様々である。
それぞれの国における公的制度と民間医療保険の関係性を整理するとともに、「なぜ民間医療保険が必要とされているか」に焦点をあてながら、各国の民間医療保険市場の現状について紹介する。

   
 

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