損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2014年3月31日発行 Vol.64

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
 
掲載論文: 1..米国オンショアキャプティブの動向
  2. 保険金支払を最終まで完了させる事業の現状と意義  
―保険事業終了後に保険金支払を完了させるrun-off (legacy)事業と保険事業の特性―
 

3. ブラジル損害保険市場の動向 
―2012 年の自動車保険を中心に―

 

4. アジアの農業保険市場

 

5. インドネシアの公的医療保険制度改革の動向

 

6. イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向


 
米国オンショアキャプティブの動向(PDF:4.5MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員 廣岡 知

   
 

T.はじめに
グローバルな保険市場の中で、キャプティブの存在感が増しており、中でも米国オンショアキャプティブが増加している。本稿では、近年増加が著しい米国オンショアキャプティブの動向やその背景等を取り上げる。

U.キャプティブの概要と米国市場概況
企業はキャプティブを活用することで、リスクマネジメントの精緻化及びファイナンスを狙っている。これにより、保険手配の自由度を高めたり、保険会社に認められた独特の会計制度を利用したり、再保険市場に直接アクセスすること等が可能となる。2012 年時点で世界のキャプティブ数は約6,000 社あり、そのうち米国オンショアキャプティブは約37%を占めている。本拠地別に見ると、11 の州でほとんどを占めており、偏りがある。キャプティブの設立は35 の州で認められており、近年本拠地を巡って州間での競争が激化している。

V.オンショアキャプティブ増加の背景
1980 年代半ば・2000 年代初頭の市場のハード化の際に、キャプティブ設立は急増し、大企業から中堅企業まで活用の裾野が広がり、小規模なキャプティブが増加するとともに、設立地がバミューダ等オフショアからオンショアへ移行していった。小規模キャプティブへの税制優遇も促進の一つのきっかけとなっている。

W.各州の動き
バーモント州は、1981 年に法律を制定しキャプティブ誘致を積極的に進めている。米国オンショアキャプティブが増加する発端となっており、キャプティブの数は圧倒的に米国一の規模である。デラウェア州は、米国内で3 番目の規模であるが、ここ数年で急速に増加している。

X.さいごに
中堅企業のキャプティブ活用拡大のトレンド及び伝統的保険市場への影響が注目されるところである。テール・リスクやブラックスワン・イベントのように、キャプティブには適さないリスクもある。米国では、リスクマネジメントの手段として、一般的となりつつあるキャプティブを引き続き注視していきたい。

   
 
保険金支払を最終まで完了させる事業の現状と意義
―保険事業終了後に保険金支払を完了させるrun-off (legacy)事業と保険事業の特性― (PDF:0.8MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.保険金支払を最終まで完了させる事業の背景と本稿の課題
保険期間が終わってもその後長期に保険金を支払わなければならない状況を保険事業では経験することがある。アスベスト等の深刻な健康被害に関する保険請求は長期間継続し、予想を超える巨額の支払額に達し、保険者の破綻・事業停止を引き起こした。その場合でも、保険者は保険金支払の責務を全うする必要があるため、保険金支払を最後まで完了させる、run-off (legacy)事業が運営されている。本稿では、この事業とその市場の実態・特徴を整理確認したうえで、保険事業のひとつであるrun-off (legacy)事業の実態から保険事業特有の事業リスクについて検討する。

U.run-off (legacy)事業の現状
事業停止後に残存する保険支払責任であるlegacy liability は、事業の破綻、事業停止に伴って発生することもあるが、より戦略的な目的や改革を実現するために発生することもある。legacy liability に取り組む方法には、自社内対応と外部の専門事業者を利用する外部化の二つがあり、また成り行きに任せる方法から再保険の利用、保険事業を他の主体に移転する取引を実施する方法まで多様な方法がある。いずれの場合も専門的サービスを利用することがあるため、ロンドンでは専門サービス提供市場が形成されている。run-off (legacy)事業に関する取引は、2000 年代に近代化が進み、データ分析、デュー・ディリジェンス手続きなどが一般化し洗練されてきた。成り行きに任せるのではなく、積極的にlegacy liabilityの問題に取り組むアプローチは、費用を掛けても将来の不確実性を低減しようとする取組みである。

V.ポートフォリオの移転としての金融事業の側面
run-off (legacy)事業では、保険責任が別の事業主体に移転される。その際、保険金支払のための資金も受け取るので、保険責任だけでなく資産・負債のポートフォリオの移転を受けることになる。run-off(legacy)事業の市場においては、保険ポートフォリオの移転先すなわち買い手は保険会社だけでなく投資会社もある。投資家から見れば、移転対象となった保険ポートフォリオは投資物件である。run-off(legacy)事業において保険ポートフォリオの移転を受けた状態は、最初に多額のキャッシュのin があり、その後無くなって、out のみがある状態である。銀行業でも保険業でも、キャッシュのin とout の時点は異なる。異時点間のキャッシュの交換には、不確実性が伴う。融資先への貸付には、貸し付ける側にとって信用リスクが伴う。保険金支払には、保険事業の側にとって保険料算出・保険金支払額見積もり時に、予想を超える支払が出現するというリスクが伴う。異時点間のキャッシュの交換に不確実性が伴い、不確実性を引受け制御する点では、金融業と保険業には類似性がある。

W.run-off (legacy)事業および保険事業の事業リスク
run-off (legacy)事業における移転では、将来の保険金支払に関する予想を違えた場合でも保険責任を全うするという事業リスクも移転する。保険料収入が継続する一般の保険事業とは異なり、不確実性が高い負債を引き継ぐ一方追加の保険料収入がないので、保険事業の事業リスクがより顕在化する。保険事業では、予測を超えた保険金支払が発生しうるという将来の不確実性に対処するために、この不確実性に対処できる資本とそのリスクマネジメント能力が必要であることを、run-off (legacy)事業でははっきり示している。

   
 
ブラジル損害保険市場の動向 ―2012 年の自動車保険を中心に― (PDF:1.1MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員  加藤 麻衣

   
 

T.はじめに
本レポートでは自動車保険を中心にブラジル損害保険市場の概況を2012 年のデータに基づいて整理する。また、ブラジル損害保険市場の主要種目である自動車保険については、現在抱えている課題とその対策について考察する。

U.ブラジル損害保険市場の概況
2012 年の元受保険料は前年比12.9%増加し、479.4 億レアル(約2.1 兆円)となった。損害率は年によってバラツキはあるものの低下傾向にあり、2012 年は前年からおよそ1%改善し、56.9%となった。ブラジルでは代理店を通じた保険販売は認められておらず、全てブローカーを通じて販売される。その中でもとりわけ銀行系ブローカーの影響力は大きく、広大な国土全土に支店を有するという強みを活かして、積極的に保険販売に取り組んでいる。

V.自動車保険市場の概況
ブラジルの自動車保険制度は被害者・加害者を問わずに補償する傷害保険制度である強制保険部分と任意保険部分とに区分される。2012 年の強制保険部分の元受保険料は約35 億レアル(約1,539.5 億円)、同保険の損害率は悪化傾向が続いており、88%となった。任意保険についてみると、経済成長に伴って自動車の走行台数が増加するにつれて市場は拡大しており、2012 年の元受保険料は前年比15.9%増加して248 億レアル(約1.1 兆円)、損害率は65.2%となった。しかしながら、任意保険は資産保全の意味合いが強く、保険料の7 割を車両保険が占めており、加入率は3 割程度と低い水準にある。

W.自動車保険の課題と対策
自動車保険の最大の課題は高い盗難発生率である。これに対抗するために保険業界はアンダーライティングの精緻化や盗難車両の追跡などの対策を講じている。盗難による損害が増加し、保険料が高騰していることから自動車保険はますます庶民の手の届かないものになり、普及を阻害する要因となっている。

X.おわりに
これまで保険普及率の伸びは緩慢でありながらも、景気の加熱に伴って元受保険料は増加してきた。しかしながら、景気が停滞し始めている現状で保険業界が引き続き成長していくためには、保険産業の裾野を広げていくことが不可欠である。

   
 
アジアの農業保険市場 (PDF:1.3MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員 喜田 亜紀子

   
 

T.はじめに
近年、農業保険のニーズは、世界的に高まっているが、その一方で、アジアを中心とした新興国では十分に普及していない。本稿では、アジアの農業保険の現状と変遷を確認するとともに、市場拡大に向けた方向性を確認する。

U.農業保険へのニーズの高まり
農業保険へのニーズが高まっている理由として挙げられるのは、人口増加にともなう食料需要の増加である。これに加え、開発途上国に対する気候変動適応策として注目されている。

V.アジアの農業保険市場の現状と課題
アジアの農業保険市場は、近年、拡大傾向にあるものの、普及率は低い。アジアで農業保険が普及しない要因として、顧客である農民側、保険提供者側の双方に様々な課題が存在している。

W.アジアの農業保険の変遷と官民パートナーシップの動き
アジアでは、公的保障制度として農業保険が導入されたものの、財政面で維持できず廃止となった国もある。その後、民間保険会社による参入がみられ、直近10 年の動きとして、官民パートナーシップによる農業保険が拡大しつつある。

X.農業保険へのテクノロジーの活用
近年、アジアの農業保険へのテクノロジーの活用がみられる。テクノロジーの活用により、損害調査やモニタリングコストの抑制などの効果が期待されている。

Y.おわりに
アジアの農業保険は、創成期にあるが、市場拡大の方向性として、官民パートナーシップの発展による普及が期待される。テクノロジーの活用により、コスト効率の高いビジネスモデルの構築も期待される。

   
 
インドネシアの公的医療保険制度改革の動向(PDF:1.2MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員 鈴木 久子

   
 

T.はじめに
2014 年1 月、アジア最大規模の国民皆保険制度がインドネシアでスタートした。これまでインドネシアには全国民を対象とする公的医療保険制度は存在せず、無保険者の数は、国民の約4 割に及んでいた。政府は初年度である2014 年に国民の約半数にあたる1.2 億人への保険適用を予定しており、順次加入者を拡大しつつ2019 年までに全国民への普及を図る計画である。

U.国勢・保健衛生
インドネシアは世界第4 位の人口を有し、豊富な生産年齢人口と中間所得層の拡大を背景に今後も安定した経済成長が見込まれる。医療費もここ数年急速な拡大を見せているが、医療費の対GDP 比は他のASEAN 諸国と比べていまだ低い水準にある。

V.医療保険制度改革の経緯と改革の概要
アジア通貨危機を契機に高まった国民から社会保障への要望を受け、政府は2004 年に国民皆保険の導入を決め、2014 年1 月に新たな一元的実施機関を設立し新制度を開始した。旧制度ではバラつきのあった保障内容と医療サービスの利用方法について統一が図られるとともに、無保険者の取込みのための加入促進策も取られている。

W.新たな医療保険制度JKN の内容
新制度は、政府が保険料を全額負担する貧困層向けの保険(約1.1 億人)とそれ以外の者が加入する保険料方式の保険の2 種類の制度で構成される。保障内容は両制度間で基本的に同一であり、治療に必要な処置は自己負担なく無料で利用できる。医療アクセスはゲートキーパー制がとられている。

X.新制度が抱える課題
制度は始まったばかりだが、貧困層向け制度にかかる巨額の政府負担の持続可能性、貧困層以外の者からの保険料徴収の確実性、医療設備・医療人材不足による医療サービス供給体制の脆弱さなど、インドネシアの挑戦には制度の確立および持続性を左右する難しい課題が内在している。

Y.おわりに
皆保険導入の後押しを受け、インドネシアの医療市場には国内外から熱い期待が寄せられている。2019 年にむけ政府がどう課題に対処し制度確立を主導していくか、今後の取組みと成果を注視したい。

   
 
イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向 (PDF0.7MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者: 研究員 関口 敦子

   
 

本稿では、当研究所が継続して行っている欧州先進国に関する調査の一環として、イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の概観について紹介する。
イギリスにおける2012 年の損害保険の元受保険料は、448 億ポンドであり、前年から3.7%の増加となった。コンバインド・レシオは、99.5 であった。ドイツにおける2012 年度の損害保険の元受保険料は942 億ユーロと、前年から3.2%の増加となった。コンバインド・レシオは97.2 であった。フランスにおける2012 年度の損害保険の元受保険料は、678 億ユーロであり、前年から3.6%の増加となった。コンバインド・レシオは100 であった。

   
 

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