損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2012年9月28日発行 Vol.61

 

内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
 
掲載論文: 1. 活況を呈し始めた保険リンク証券への期待
- キャットボンドを中心とした動向 -
  2. 再保険の進化と最近の再保険市場
- 再保険の多様性とファイナンス理論の浸透 -
  3. これからの医療を考える
- 「社会保障と税の一体改革」をどう見るか -
  4. 米国損害保険市場の動向
- 2011年の実績と支払備金をめぐる考察 -




 
活況を呈し始めた保険リンク証券への期待
- キャットボンドを中心とした動向 - (PDF:1.7MB)
   
 

= 要 約 =
主任研究員 多田 修

   
 

T.はじめに
保険リンク証券とは保険対象の事故・事象などに関連した証券化商品の総称である。これは保険会社の資本の有効活用に一役買っており、最終的には保険契約者である企業や個人も便益を受けている。また、政府部門の国民に対する災害補償力向上に役立つとされており、マイクロインシュアランスや災害プールとの親和性から、新たな災害対応スキームの一翼を担うとの期待もある。

U.保険リンク証券
アメリカで自然災害が多発した1990年代に保険リンク証券は誕生した。その代表であるキャットボンドは、高い利率で投資家から資金を集め、予め定められた要件を満たす災害が発生すればボンド発行者が資金を受取れる仕組みである。このボンドは1994年に誕生し、金融危機のあった2007年まで市場は順調に拡大していった。発動要件や資金の管理方法などの違いで幾つかのタイプがある。
キャットボンド以外にも、先物・オプション取引、ILW(インダストリー・ロス・ワランティ)、コンティンジェント・キャピタル、サイドカーなどの仕組みがある。キャットボンドを含めて各種商品が揃っていることで、投資家のリスク選択肢を多様化させ、彼らにリスクヘッジの手段を提供することになり、保険リンク証券市場全体の発展に役立っている。

V.マーケット状況
アメリカのハリケーン・地震、欧州の暴風雨、日本の台風・地震が「世界の5大危険」といわれている。キャットボンドも5大危険、とりわけアメリカのハリケーンを対象にしたものが多い。キャットボンドは、リーマンショックの影響で2008年第4 四半期には発行が一旦ストップした。だが、最近では、主な発行者である保険会社にとっては多発する自然災害のリスク移転先、投資家にとっては低金利環境下での有利な運用先となるため需給ともに回復している。昨年、東日本大震災やアメリカの竜巻でボンドの発動(事故)があったが、発行ペースは鈍るどころか逆に高まっている。
最近は、公的機関もボンド発行者に加わり、主要な発行セクターになりつつある。発行ペースが上がっているのでボンドの金利スプレッド拡大の懸念もあるが、資本市場の需要も旺盛で、当初計画以上の起債となった例も多い。また、投資家の中心も専門ファンドやヘッジファンドに移行し、保険市場から資本市場へのリスク移転機能が発揮されている。

W.最後に
自然災害の多発だけでなく、低金利による運用益の減少は、保険市場(特に再保険市場)の料率アップや引受の制限といったハード化の動きを誘発するが、保険リンク証券はこれを緩和する機能がある。保険リンク証券の市場規模は小さいが、今後、発展する可能性は高いと考えられる。保険リンク証券など代替的リスク移転手段は、常に進化しているので、保険に関わる者は、実務慣行にとらわれず新しいストラクチャーの理解に努めていかなければならない。

   
 
再保険の進化と最近の再保険市場
- 再保険の多様性とファイナンス理論の浸透 -(PDF:1.4MB)
   
 

= 要 約 =
ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
保険は海上保険から始まる長い歴史を有している。最初の再保険契約は、その海上保険について締結されたと言われている。再保険も長い歴史があり、環境に適合して革新を重ねて今日の形態に達した。環境に適合変化してきた沿革と多様な様相に着目して、再保険の動向を描写する。

U.再保険の略史と再保険の進化
複数の保険会社による巨大リスクの共同引受から独立して、再保険事業は再保険市場とともに進展した。時代環境で生じた問題を解決する必要性に対して革新的な仕組みを実現した出来事として、保険引受を可能にするUnderwriting capitalを引き出し引受能力としてシステム化したロイズ保険市場と、比例再保険から非比例再保険への発展がある。1990年代は、保険に代替するリスク移転手段(ART)が、資本市場との交流に伴って導入発展し、再保険市場は資本市場との共通言語を習得した。

V.再保険市場の概況と再保険の多様性
再保険の多様性を示す事例として、再保険市場での保険料規模で大きな生命再保険と米国のヘルスケア再保険の概要を紹介する。これらの再保険はリスク移転以外の多様な機能を有している。

W.最近の再保険市場の動向と市場分析の方法
2000年代に、再保険の世界にEnterprise Risk Managementとファイナンス理論が浸透した。再保険は、他の保険者の保険支払責任と資産が一体化したポートフォリオの移転を受け、長期的な時間軸のなかでリスクを分散するものであるので、もともとファイナンスとの親和性がある。現時点で振り返れば、ARTの誕生も自然な流れである。再保険市場分析にファイナンス理論が浸透しているのは、再保険がファイナンスとの親和性があることの反映でもある。

   
 
これからの医療を考える
- 「社会保障と税の一体改革」をどう見るか -(PDF:2.1MB)
   
 

= 要 約 =
上席研究員 水田 邦雄

   
 

 世界に例を見ない高齢化が進む中、「わが国の医療・介護システムは持続可能か」という切実な問いかけが、折からの内外の財政危機もあって、各方面から投げかけられている。この問題を考える上で、人口構造から見るとわが国は重要な局面に指し差し掛かっていると言えよう。医療とこれに隣接する介護サービスの需要が高い75歳以上高齢者の動向が大きな意味を持つが、その増加が当面の最終段階を迎えようとしている。75歳以上高齢者の人口は、今後15年間でおよそ700万人規模の増加を見、その後は、21世紀半ばまで2100万人〜2200万人で平準化すると予測されている。これは、2025年を目標年次として、その時点で必要とされる医療・介護サービス提供体制を構築できれば、長期にわたる将来展望を拓くことができることを意味している。
 医療・介護システムに関して「社会保障と税の一体改革」は、まさに2025年時点で必要とされるサービス量を積算し、その上に今後展開されるべき政策パッケージとそれに要する費用の額を示したものとなっている。この動きは、高齢化の最終段階を前に停滞を余儀なくされてきた社会保障に活路を開くものであり、その成否に国民生活の将来がかかっているといっても過言ではない。本稿では、「一体改革」で進められようとしている医療・介護に関する構造改革に絞って、その内容について、医療を中心に概観するとともに、その実現可能性について検証していく。

※本稿は、2012年8月28日に発行した総研トピックス第12号「これからの医療を考える - 「社会保障と税の一体改革」をどう見るか - 」を転載したものである。

   
 
米国損害保険市場の動向
- 2011年の実績と支払備金をめぐる考察 - (PDF:917KB)
   
 

= 要 約 =
研究員 加藤 麻衣

   
 

T.はじめに
本稿では、米国損害保険市場の概況を2011年のデータに基づいて整理する。また、トピックとして、過年度の支払備金が減額修正されている状況について、過去と比較しながら考察する。

U.米国損害保険市場の動向
2011年の正味収入保険料は前年から3.7%増加して、4,420億ドルとなった。保険料率がいくぶん引き上げられたことから、正味収入保険料は増加したものの、竜巻などの異常災害関連の損害が膨らんだことによって、コンバインド・レシオは前年の102.5から108.4に上昇した。その結果、保険引受収支は大幅に悪化し、353億ドルの損失となった。歴史的な低金利のため、運用益も振るわず、純利益も減少し、201億ドルとなった。

V.主要種目の成績概況
2011年の個人保険分野の正味収入保険料は、保険料率の引き上げが継続したことなどによって、前年から2.2%増加し、2,344億ドルとなった。しかしながら、料率上昇を上回る損害額の増加から、損害率は2010年の75.6%から81.0%へと大幅に悪化した。企業保険分野でも、料率面では、長引くソフト・マーケット化が落ち着き、市場転換の兆しが見られ始め、正味収入保険料は5.4%増え、2,076億ドルとなった。しかし、異常災害などの影響によって、損害率は前年の71.3%から77.6%へ個人保険分野と同様に上昇した。

W.支払備金をめぐる過去との比較
2006年以降、連続して過年度の支払備金の減額が行われている。2011年も含めて、支払備金の減額は、米国損害保険業界の利益を押し上げてきた。1990年代後半にも、現在と同様に支払備金の減額が行われていた。その結果として、2000年代前半には支払備金不足に陥り、大幅な支払備金の積み増しが必要となった。楽観的な市場予測に基づく備金水準は、保険会社の資本を脆弱にし、業績悪化を招く可能性が高い。

X.おわりに
米国損害保険業界は引き続き厳しい環境に置かれている。直面している不透明な状況を保険会社が切り抜けていくためには、短期的な収益だけを追い求めるのではなく、適正な損害見込みに基づいた料率設定と、支払備金の水準保持が重要となっていくだろう。

   
 

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