損保ジャパン日本興亜総研レポート


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2012年3月30日発行 Vol.60

 

内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
 
掲載論文: 1. 米国損害保険市場の動向 - 2010年の実績と小規模保険会社の動向 -
  2. イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向
- イギリスの金融監督規制改革とイギリス、ドイツの自動車保険におけるダイレクトチャネル -
  3. 米国ヘルスケア改革における介護保険の現状と今後




 
米国損害保険市場の動向 - 2010年の実績と小規模保険会社の動向 - (PDF:1MB)
   
 

= 要 約 =
研究員 門脇 由美 廣岡 知

   
 

T.はじめに
本稿では、米国損害保険市場の概況とトレンドを2010 年のデータに基づいて整理する。また、トピックとして小規模保険会社の動向を取り上げる。

U.米国損害保険市場の動向
2010年の米国損害保険市場の正味収入保険料は4年ぶりに上昇し、4,301億ドルとなった。金融市場が安定してきたことから、資産運用面では回復が見られたが、主に損害率(損害調査費を含む。以下同じ。)が73.4%と1.4ポイント上昇したことによって、保険引受収支が悪化したため、純利益336億ドルから397億ドルと収益面の改善は小幅に留まった。特に、竜巻などの小規模な自然災害が多数発生し、元受保険会社の収益を悪化させた。

V.主要種目の成績概況
2010年個人保険分野の正味収入保険料は、多くの地域で保険料率が上昇していく兆しが見られ、約2.6%増加して2,194億ドルとなったが、コンバインド・レシオ(契約者配当後。以下同じ。)は102.6(対前年比0.1ポイント増)と若干悪化した。企業保険分野の正味収入保険料は、長引くソフトマーケットを受けて約2.8%減少して1,937億ドルとなり、コンバインド・レシオは101.2(対前年比2.3 ポイント上昇)となった。

W.小規模保険会社の動向
米国損害保険市場では、元受保険料が100 万ドル以上12.5 億ドル未満の小規模保険会社が20%程度のシェアを占めている。この背景として、種目や地域によるハイリスク市場の存在が考えられる。小規模保険会社は、代理店との連携やアンダーライティングを特徴として、大手保険会社と差別化を図っている。大手は、莫大な顧客データを収集し、それを統計学や数理モデルを用いて分析し、セグメントやプライシングの精緻化に結びつけている一方で、小規模保険会社は、地域に特化している強みを生かし、自社が引受けられるリスクのみを妥当な料率で引受け、収益を上げている。

X.おわりに
米国損害保険業界は厳しい環境に置かれており、資本過多によるオーバーキャパシティによりハード化に転じない状態が続いている。また、市場内部を見ると、小規模保険会社の新興が今後も続く可能性があり、市場のハード化への阻害要因の一つとなり続ける。

   
 
イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の動向
- イギリスの金融監督規制改革とイギリス、ドイツの自動車保険におけるダイレクトチャネル -(PDF:1MB)
   
 

= 要 約 =
研究員 喜田 亜紀子 石井 彩子 鈴木 久子

   
 

T.はじめに
本稿では、当研究所が継続して行っている欧州先進国に関する調査の一環として、イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の概況と、イギリスの金融監督規制改革の動向および、イギリス、ドイツの自動車保険市場におけるダイレクト販売の動向について紹介する。

U.イギリス、ドイツ、フランスの損害保険市場の最新動向
イギリスにおける2010年の損害保険の元受保険料は433億ポンドと、前年から6.1%の増加となった。コンバインド・レシオは104.1であった。ドイツにおける2010年の損害保険の元受保険料は552億ユーロと、前年から0.95%の増加となった。コンバインド・レシオは98.2であった。フランスにおける2010年の損害保険の元受保険料は634億ユーロと、前年から2.7%の増加となった。コンバインド・レシオは99.6であった。

V.イギリス金融監督規制改革の動向と保険業界の反応
イギリスでは、金融危機を受けた金融監督規制改革を進めており、金融サービス機構(FSA)の解体およびイングランド銀行の権限強化、マクロ・プルデンシャルな視点で監督を行う機関の新設などが改革の目玉となっている。保険会社監督規制に関しては、イングランド銀行の子会社である金融規制局(PRA)と金融行動規制局(FCA)という2つの監督機関による規制を受けることになり、ジャッジメントベースと呼ばれるアプローチが示されている。改革案に対して、イギリスの業界団体は懸念を示している。

W.イギリス、ドイツ自動車保険市場におけるダイレクト販売の動向
イギリスの個人自動車保険市場は、ダイレクト販売が世界で最も進む市場であるが、アグリゲーターの普及により、ブローカーとダイレクト販売という販売チャネルによる区別が、少なくともアグリゲーターを利用する顧客にとってはあまり意味をもたなくなっている状況がうかがわれる。ドイツの自動車保険市場は、ダイレクト販売が拡大傾向にはあるものの、対面販売による代理店チャネルの価値が現在も市場に根付いており、ダイレクト販売の普及過程はイギリスとは異なる軌跡をたどることが予測される。

   
 
米国ヘルスケア改革における介護保険の現状と今後(PDF:788KB)
   
 

= 要 約 =
ファカルティフェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
2010 年に成立した米国のヘルスケア改革法は、健康保険へのアクセスの拡大を実現するための、多岐にわたる大規模なヘルスケア改革を目指したものであった。ヘルスケア改革で対象となっているのは健康保険だけではない。介護保険も改革対象となっている。米国の介護保険は、社会保険制度ではなく民間保険者によって提供されている。民間保険は任意加入であるが、連邦・州政府によって民間保険の普及促進を図るプログラムが実施されてきた。連邦・州政府の取組の延長線上に、ヘルスケア改革法は、連邦政府が運営する任意加入の介護保険制度を創設しようとしている。本稿は、同法が介護保険改革のどのような問題に取組んでいるのか、その改革は何を変えようとしているか、その見通しはどうかについて取り上げる。

U.介護保険の位置づけと介護サービス提供体制
米国では社会保険としての介護保険は存在しない。介護サービスは、その財源全体の70%強を低所得層等を対象とするメディケイドと高齢者を対象とするメディケアの公的制度に負っている。民間の介護保険は、7%弱を占めるに過ぎない。民間の介護保険は、当初は公的制度であるメディケアの補完から始まりその後給付内容は拡大したが、それでもメディケア、メディケイドの公的制度が給付しない介護サービスを補完的に対象にしている。民間の介護保険は、将来の時点で介護サービスに必要な金銭給付をする商品であり、金融商品としての性格があり、各種の投資商品、リバースモーゲージなどの金融商品とも競合する関係にある。

V.介護保険問題への取組経緯
人口動態の変化は、現状でも高齢者への給付の負担が大きいメディケアとメディケイドにさらに財政的負担を増大させる可能性が高い。介護保険の普及促進は、ミドルクラス(中産階級)を中心に財政負担増加を軽減させることが期待できるので、これらの公的制度の持続可能性に関わる政策的な課題になっている。介護保険の普及により、州民がその資産を使い尽くしてメディケイドの給付対象になる数を減少させるために、州政府と民間保険会社とがパートナーシップを締結し、民間介護保険を普及促進する政策が実施されている。

W.ヘルスケア改革法における介護保険改革
州・連邦が介護保険普及に取組んだにも拘わらず、2010 年ヘルスケア改革法の審議時点になっても、将来の介護サービス費用を負担するための介護保険の普及は不十分な状況が続いていた。この問題を解決する介護保険市場に対する取組が必要になり、ヘルスケア改革法の一部としてCLASS Actが成立した。CLASS Actは、雇用主の団体保険の販売ルートに着目し、雇用主の団体保険の介護保険が普及するように、連邦政府が運営する任意加入の介護保険制度を創設し、併せて機能障害を被った高齢者に財政的およびアドバイザリー的な支援を提供して、施設に入所しないでも地域で自立して生活できるようにすることを目的にしている。

X.介護保険改革の問題点と今後の見通し
CLASS Actは、連邦保健社会福祉省が介護保険制度を具体化実施することを規定しているが、同省は検討の結果、法律に定める条件では実行不可能と結論づけ、具体化を凍結した。介護保険料算出の基礎率は不安定であり、一般財源からの負担、保証措置がない条件下では、将来保険給付が支払不能になる不確実性があり、任意加入の場合に生じる逆選択の問題が深刻であるためである。今後、連邦議会で修正の必要があるが、ヘルスケア改革法の廃止を求める共和党と民主党の対立が深刻であり、修正実施の目処は立たない状況にある。

   
 

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