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2011年3月31日発行 Vol.58

 

内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
 
掲載論文: 1. 米国損害保険会社における販売チャネルの最新動向
- 顧客の購買行動変化と新たなマルチチャネル化 -
  2. 米国におけるヘルスケア改革をめぐる健康保険業界の動き




 
米国損害保険会社における販売チャネルの最新動向
- 顧客の購買行動変化と新たなマルチチャネル化 -(PDF:872KB)
   
 

= 要 約 =
研究員 池田 香織

   
 

T.はじめに
本稿では、米国損害保険会社における販売チャネルの最近の動向として、主にインターネットの浸透や顧客の保険購買行動の変化と、それに伴う保険会社の対応について整理する。また、これに伴い近年語られるようになってきている新しい「マルチチャネル化」の形についての見方を紹介する。

U.米国損害保険業界におけるチャネルの現状
米国損害保険市場における主な販売チャネルには独立代理店チャネル、専属代理店チャネル、ダイレクト・レスポンスチャネルがある。1990年代頃から保険会社は、販売チャネルを追加することによって、そのチャネルを通じた対象マーケットの多様化や顧客基盤の拡大を目指してきた。チャネル別の保険販売シェアを見ると、個人自動車保険においてダイレクト・レスポンスチャネルが1997年から2007年の10年間で7.9%から14.9%に増加している。しかし、現在でも最も選ばれている販売チャネルは代理店である。代理店を選ぶ人は、「人と話したり会ったりしたい」といった相談機能を評価しており、代理店から購入しない人はオンラインやフリーダイヤルの24時間対応の利便性を評価している。

V.インターネットの浸透と保険会社の取り組み 〜 マルチチャネル化の進展
U.のとおり、代理店チャネルのシェアは圧倒的である。しかし将来的にオンラインで保険を購入する可能性があると回答した人の割合は2010年に35%となり、若い世代になるほどオンライン購入の割合は高まる。インターネットの浸透に伴い、インターネットで保険に関する情報を探す人も増えている。これを受け、保険会社間にインターネット上の顧客争奪戦が起きている。具体的には、インターネット広告の増加、アグリゲーターやソーシャルメディアの活用などである。また、オンライン保険料試算機能はすでに普及しているが、そこからの成約率向上に向けた取り組みとして、インターネットと人チャネルを組み合わせた「ハイブリッド型」の保険料計算機能も出てきている。このような変化を踏まえ、近年米国では新しい「マルチチャネル化」について語られるようになってきた。新しい「マルチチャネル化」とは、様々なチャネルの活用に慣れた特に若い世代の好みに合わせ、代理店チャネルを含む様々なチャネルを顧客がストレス無く選択・移動し、購買までたどり着けるようになることを指す。保険会社がこれに対応するためには、チャネル共通で活用できるよう顧客情報を蓄積・管理することが重要と見られている。

W.おわりに
もともと顧客との接点が多いとはいえない保険業界にとって、限られた顧客接点の一つ一つが顧客満足度を決める極めて重要な判断材料となる。しかし従来「チャネル」単位で組織やシステムを構築してきた保険会社にとって、顧客がストレスなくチャネル間を移動できるシームレスな「マルチチャネル」を実現することは非常に大きなチャレンジであり、実行はたやすくないと考えられている。
米国保険会社における、「顧客を中心とした」新しいマルチチャネル化の今後の進展に注目したい。

   
 
米国におけるヘルスケア改革をめぐる健康保険業界の動き(PDF:827KB)
   
 

= 要 約 =
副主任研究員 田中 健司

   
 

T.はじめに
米国では、公的医療保障制度の対象外で、かつ民間健康保険に加入していない、いわゆる無保険者が多数存在している。オバマ大統領は、全国民に質の高い負担可能なヘルスケアを提供するための改革の重要性を訴え、2010年3月にヘルスケア改革法を成立させたが、健康保険業界は多大な負担を強いられている。本稿では、米国におけるヘルスケア改革を、健康保険業界への影響という観点から取り上げる。

U.改革の背景
近年、米国における無保険者数および全国民に占める無保険者の割合は増加傾向にあり、2009 年における無保険者数は5,000万人を超え、全国民の16.7%を占めている。また、医療費およびその対名目GDP比も、近年上昇傾向にある。

V.改革法について
2010 年3 月に成立した改革法(Patient Protection and Affordable Care Actおよびその修正法からなる。)では、健康保険の加入・給付に関する条件設定の制限、法定最低医療損害率の遵守義務、メディケイドの適用対象拡大、個人や中小企業の健康保険加入を促進するための健康保険取引所(Exchange)の設立、健康保険加入の義務化等、健康保険の加入促進に関する項目が数多く盛り込まれている。議会予算局の推計によれば、改革法の施行に伴う財政収支は、2010年度〜2019年度において1,240億ドル改善され、また2019年において、改革を行わない場合5,400万人に達する無保険者は、改革を行うことによって2,300万人に削減される。改革法は、2010年以降段階的に施行されることとなっており、特に2014年において、Exchange の運営開始等、数多くの改革が行われることとなっている。

W.改革法の施行に伴う健康保険業界の動向および方向性
2010年9月に施行されている健康保険の加入・給付に関する条件設定の制限に伴い、いくつかの健康保険会社が保険料率の引き上げを申請する動きが見られた。連邦厚生省は、不当な保険料率の引き上げを行った健康保険会社については、Exchangeを通じた適格プランの提供を認めない意向を示した。また、条件設定の制限の1 つである、健康上の問題を理由とする子供の健康保険の引受拒否の禁止を受けて、子供のみを補償の対象とする健康保険プランの販売を停止する健康保険会社が相次いだことから、連邦厚生省は、健康上の問題のある子供を加入させる場合の保険料率の割増を暫定的に認める見解を示している。 2011年より健康保険会社は医療損害率を法定最低医療損害率以上とすることを義務付けられる。連邦厚生省が公表した規則における医療損害率の定義によれば、医療サービスの給付コストとともに分子に算入される医療の質の向上に要したコストには、根拠に基づく医療に立脚した、アウトカムの改善、再入院の防止、ウェルネスおよび健康増進等の取組みのコストが含まれるとされている。
Exchangeに関しては、これに相当する健康保険取引所をマサチューセッツ州とユタ州が既に独自に設立しており、他の州のExchangeも、これらのいずれかに近い形になるのではないかと見られている。

X.おわりに
健康保険会社にとって今般のヘルスケア改革は、従来の事業のあり方を根本から見直さざるを得ないという問題をはらんでいる。一方、中間選挙で野党共和党が下院の過半数議席を獲得したことや、健康保険加入義務が違憲であるとして連邦地方裁判所に提訴する州が相次いだことが、ヘルスケア改革を目指すオバマ政権にとっての逆風となっている。米国のヘルスケア改革はさらに本格化することとなるが、その動向とともに、健康保険業界が受ける影響や今後の動きについて、引き続き注視することとしたい。

   
 

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